Nutrition

今更聞けない「マクロビ」って?


食のキーワードは様々存在しますね。「ベジタリン(菜食主義)」「ビーガン(完全菜食主義)」などの思想や価値観を示すものから、「オーガニック(有機栽培)」、「グルテンフリー」や「non-GMO」などその食物の内容を示すものまで。気になった言葉を都度ご紹介してきましたが、今回は「マクロビ」について。

「マクロビ」という言葉からは何も想像がつきませんが、フルネームは「マクロバイオティック (Macrobiotic) 」。語源は西洋医学の祖とも言われる古代のヒポクラテスが「偉大な生命」「長寿」という意味として使っていた「マクロビオス(makrobios)」というギリシャ語です。つまり、マクロビは「長寿食」意味するのです。

 

日本で生まれた食事法

カタカナの名称ですし、マクロビも外国で生まれた食事法なのかなと思いきや、実は、第二次世界大戦前後に食文化研究家の桜沢如一氏が提唱し根づかせた食生活法です。桜沢氏はマクロビを広めるべく渡仏、渡米。一時はヒッピーの文化に受け入れられたり、その後政府から禁止措置を出されたりという紆余曲折を経て、ついにはアメリカの高級ホテルや政府関係、ハリウッドスターなどが実践するようになりました。その後、逆輸入される形で日本でも注目されるようになったという背景があります。

 

思想としての側面が強い

食事法と聞くと何か特定のものを食べない、あるいは病状などに即して栄養学的にメニューを調整する、などのイメージがありますが、マクロビはむしろ「思想」に近く、生活そのものを改善するような平和運動が根底にあるとされます。基盤となっているのは、「食育」という言葉を造語した明治時代の薬剤監であり医者であった石塚左玄氏の食物に関する陰陽論です。代表的な思想・キーワードを幾つかご紹介いたします:

  • 陰陽調和:陰の性質は遠心的・拡散的であること、上昇性、静かさ、冷たさなど。陽の性質は求心的・収縮的であること、下降性、動き、熱さなど。この原則を、食べ物に置き換えて、バランスを取ることが重要だとしています。
  • 身土不二:からだ(身)と土(土地)は不二(分かちがたく結びついているもの)である、という意味。「地産地消」とも似ていますが、できるだけ住んでいる土地でとれたものを食べることで、その土地の気候風土に適した身体になり、健康を保つことができるという意味です。
  • 一物全体:一つの食品を丸ごと食べることで陰陽のバランスが保たれるという考え。「白い米は粕である」と玄米を主食としてすすめているため、「マクロビ=穀物菜食、玄米菜食」というと捉え方もされます。

 

このように、マクロビはビーガン同様、思想的な側面が強いので、必ずしも栄養学的、科学的な根拠を持っているわけではありません。ですが、以前ご紹介した”eat clean“の精神、つまり、食べ物を大切にする心や、人間が大自然の一員であるということを自覚しようという考えに通づるところもあります。このような食事方法が再注目されるようになったのは、今や食は栄養を摂取するだけでなく、その人の考え方やライフスタイル、表現の一つになってきている証拠だと思います。健康に、美容にと取り入れるよりも、自分にフィットした考えをピックアップし、実践するという姿勢でいるのがいいですね。

 

参考:正食協会

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