Nutrition

【連載】スポーツと栄養 ーPart2 脂質ー


脂質も糖質と同様に身体を動かすためのエネルギー源になります。1g当たり9kcalと、糖質の倍以上のエネルギーを持っており体内貯蔵量も非常に多いので、長時間の負荷の低い運動を行う際のエネルギー源となります。ただし、エネルギーの生産スピードが糖質よりも遅いため、瞬発力の源となったり、高強度の活動でのエネルギーとしての利用度は極端に低くなります。糖質がガソリンならば、脂肪は木炭のイメージでしょうか。

脂質はエネルギー源だけではなく、体温を保持して臓器を守ったり、細胞の壁を構成する、油脂に溶ける脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K等)の吸収など、大切な働きを担っています。

「脂質」と聞くと、「太る」「カロリーが高い」「生活習慣病の原因」などマイナスのイメージが多いと思いますが、脂肪は炭水化物やたんぱく質と並んで3大栄養素の一つです。不足すると疲労の蓄積や貧血なども起こり、結果的にはパフォーマンスの低下にも繋がります。ただし、糖質同様、いくつかの種類に分けられ、「質」を考えて摂取することが求められます。

脂肪酸は炭素(●)・水素(○)・酸素(◎)から構成されますが、炭素数と不飽和結合(=)の有無・数によって分類されます。

  • 飽和脂肪酸(Saturated fats):不飽和結合がないので、安定しており、常温で 固まる脂質のことを言います。バターやヘット(牛脂)、ラード(豚脂)などに多く含まれています。コレステロールを肝臓へと取り込む働きをする低下させ、悪玉(LDL)コレステロールを増加させる作用を持つとされ、冠動脈性心疾患や糖尿病など変性疾患などを引き起こします。摂りすぎは禁物ですが、体に全く不要というわけでもありません。もともと日本人の摂取量は欧米諸国に比べて低いので(エネルギー摂取量の7%程度)、減らすことより増やさないことを心がけるといいでしょう。
  • 不飽和脂肪酸(Unsaturated fats) :不飽和結合があることによって流動性が高い、つまり、常温で固まらない脂質のことです。体内でも固まりにくく、血中の中性脂肪やコレステロール値の調節をサポートします。不飽和結合の数によって、さらに2種類に分かれます。一価不飽和脂肪酸の代表的なものはオリーブ油に含まれているオレイン酸。多価不飽和脂肪酸には、不飽和結合の位置によって「オメガ(n-)3系」と「オメガ(またはn-)6系」があり、オメガ3系は、魚に豊富に含まれているDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)が代表的です。オメガ6系は、ひまわり油、コーン油などに含まれているリノール酸。悪玉コレステロールを減らす作用は、一価不飽和脂肪酸よりも多価不飽和脂肪酸の方が強いといわれています。
  • トランス脂肪酸:食品中に含まれる大部分の不飽和脂肪酸の不飽和結合は「シス型」(水素が同じ側につく)となっていますが、液状の油からマーガリンやショートニングといった半固形型状態の油脂をつくると、水素が反対側につき、「トランス型」となります。食用油の脱臭工程において行われる高温処理でもトランス脂肪酸が生成されています。血中の悪玉(LDL)コレステロールを増加させるとして危険視されています。ただし、日本人の平均的な摂取量はエネルギー摂取量の1%未満であり、大きな影響はないと言われています。極端に増やしすぎることのないように注意しましょう。
  • 必須脂肪酸(Essential fatty acids) :不飽和脂肪酸の中の、体内でつくることができず、食品から摂取することが必須となる脂肪酸です。心臓を保護する効果や、様々な病気のリスクを下げる効果があるとしてメディアでも話題になっています。多価不飽和性脂肪酸オメガ3系のα-リノレン酸、EPA、DHAや、オメガ6系のリノール酸、アラキドン酸、そして(体内でも合成されますが)一価不飽和脂肪酸オメガ9系のオレイン酸を指すこともあります。必須脂肪酸は細胞壁を健康に保ち、炎症・消化・神経伝達・免疫・ホルモンの産生などに関わっているため、不足すると細胞機能が低下し、様々な健康被害がおきます。あまに油や大豆油に多く含まれるほか、くるみやかぼちゃの種、ゴマ、アボカド、緑黄色野菜、魚からも摂取できます。ただし、必要だと言って摂りすぎてもエネルギー過多になりますし、善玉(HDL)コレステロールを減らしてしまうという報告もあります。上記のような食材で摂取するのはいいですが、何でもかんでも「オイルをかけて〜」というのはお勧めできません。
  • コレステロール(Cholesterol):悪者のように扱うことが多いため誤解されがちですが、実はコレステロールは不要なものではなく、健康な身体のために必要なものです。 細胞の一番外にあり、細胞の形を整える「細胞膜」を作るために欠かせない成分であり、脂肪の消化吸収に必要な「胆汁酸」や、筋肉をつけ競技パフォーマンスを上げる「ステロイドホルモン」の材料になるなど適正量なら身体にプラスの影響を与えます。コレステロールは悪玉(LDL)と善玉(HDL)に大別されます。悪玉は、肝臓で作られたコレステロールを抹消組織に運びます。抹消組織で吸収できないくらいコレステロールの血中濃度が高いと、動脈硬化症や脳梗塞、心筋梗塞などの生活習慣病になるリスクが非常に高くなります。また、アスリートであれば心臓や脳への血流量の低下によるパフォーマンスの低下にも繋がりかねません。善玉は、抹消組織のコレステロールを肝臓に運び、胆汁酸として体外へ排出します。悪玉とは反対の作用なので、善玉を摂取して摂れば悪玉が原因で起こる疾患の予防となります。コレステロールの質を決めるのは、脂肪酸の種類です。飽和脂肪酸は悪玉コレステロールの増加につながります。対して一価不飽和脂肪酸のオレイン酸は悪玉を減少させ、善玉を減少させない働きがあります。

日本人のエネルギー摂取目安は炭水化物(糖質)から50-65%、脂質から20-30%が目安とされていますが、インスリン抵抗性やおよび高インスリン血症を発症していない限りは、エネルギー密度の高い脂肪の摂取量を抑えたほうが、減量・脂肪減少効果は高いと考えられます。

※長期的な高脂肪食の摂取によりミトコンドリアの増加により、長時間運動の後半における疲労の発現を遅らせる期待があることから、ウルトラマラソンやトライアスロンなどの持久力が求められるスポーツでは、低糖質・高脂肪食(=ケトン食)を取り入れることがあります。上記のような特殊なスポーツに限って有効とされているため、ここでは詳しい説明を割愛します。


導入

Part 1 
炭水化物(糖質)… 成果を発揮するための燃料

Part 3(2018/2/19配信)
たんぱく質… スポーツする際に必要な量は?

Part 4(2018/2/26配信)
ビタミンとミネラル… 運動量に伴い摂取量を増やすべきか?

Part 5(2018/3/5配信)
運動前後の食事法

Part 6(2018/3/12配信)
水分の摂取の仕方

出典:Sport Fitness Advisor

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