Nutrition

脂質は本当に敵なのか?(その2)


脂質には、大きく分けて飽和脂肪酸不飽和脂肪酸の2種類があり、さらに不飽和脂肪酸は、シス型とトランス型に別れるということは、”その1”でご紹介した通りです。

そしてそのうち、トランス型(トランス脂肪酸)は食品から摂る必要がないと考えられており、むしろ、とりすぎた場合の健康への悪影響が懸念されています。では、やはり脂質は敵なのでしょうか?

決めつけてしまう前に、今回は飽和脂肪酸もう少し掘り下げてみたいと思います。

 

◆固まりやすい飽和脂肪酸
飽和脂肪酸は牛乳、バター、ラード、脂身の多い肉(ばら肉、鶏皮など)、ココナッツ油、ヤシ油に含まれています。
飽和脂肪酸の特徴は、溶ける温度が高く、常温では固体で存在していることです。
従って体内でも固まりやすく、中性脂肪やコレステロールを増加させる作用があり、血中に増えすぎると動脈硬化の原因となります。
日本の国立がん研究センターが4万3000人を追跡した大規模調査では、乳製品の摂取が前立腺癌のリスクを上げること、カルシウムや飽和脂肪酸の摂取が前立腺癌のリスクをやや上げることも示されています。

「ほら、やっぱり脂質は敵じゃないですか」と思われるかもしれません。

いいえ、実は飽和脂肪酸の過剰摂取も問題ですが、不足しても身体に弊害が生じます。飽和脂肪酸を食べる量が少ないと、脳卒中のリスクが上昇するなど、生活習慣病の原因となることが分かっているのです。

 

◆健康増進に役立つ中鎖脂肪酸
飽和脂肪酸は、炭素を結ぶ鎖の長さによって、短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸の3つに分けられます。
このうち、中鎖脂肪酸は、長さが短いため、水になじみやすい特長をもちます。そのため、水に溶けやすい糖などと同様に、小腸から門脈を経由して直接肝臓に入り、約5倍早く分解されてエネルギーになります。つまり、中鎖脂肪酸は脂肪酸の中で最も脂肪として体内に蓄積されにくいのです。
肥満女性を対象にした研究では、摂取カロリーを2200kcal以下に制限し、中鎖脂肪酸を8.9g/日摂取させたところ1~2週間後に体脂肪の蓄積が抑制されたという結果が出ています。
また、肥満気味の方が、通常の油(調合サラダ油)に替えて中鎖脂肪酸を含む油を3ヵ月間摂取し続けた研究では、体脂肪、内臓脂肪面積、体重、ウエストが減少したという結果が出ています。
さらに、中鎖脂肪酸には、糖尿病を予防する働きがあるホルモンを増加させる働きがあることも分かっています。
そしてさらに、中鎖脂肪酸には、血液中の乳酸の濃度を下げる事によって運動による疲労をやわらげ、持久的な運動能力を高める効果が期待されています。スポーツの分野においても、中鎖脂肪酸の利用が進んでいるのはこのためです。
CoconutOil_Fotor中鎖脂肪酸が多く含まれるのは、ココナッツやパームフルーツなどヤシ科植物の種子の核の部分、牛乳、母乳です。モデルや美容家に話題のココナッツオイルには、約60%の中鎖脂肪酸が含まれています。

 

<まとめ>

ともかく、脂質は1gで約9kcal、とても効率のよいエネルギー源だといえます。

体内に蓄えられた脂肪(皮下脂肪や内臓脂肪)は、身体がエネルギー不足を感じた時に、必要に応じてエネルギーに変換されます。それなりに脂肪を蓄えておかないと、いざという時にパワーが出ないということになります。
そして、中には健康維持に欠かせないものもあります。

単純に脂質=油として敵視するのではなく、重要な栄養素として理解を深め、バランスよく摂取することが鍵となりそうですね。

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