ドイツのパンと言えば黒くて硬くて酸っぱいイメージがあると思います。西ヨーロッパでも北に位置するドイツは、元来小麦が育ちにくい土地です。そのため、小麦よりも大麦やライ麦などをメインに栽培し、精度の低い精製にとどめたりして少ない収穫でも嵩が出るようにしていました。これが、ドイツの黒パンの発祥。そして今でも栄養や健康面でもドイツ人を支えています。
その黒パンの原料として有名なのはライ麦ですが、最近特に健康意識の高い方やアスリートに人気なのが、Dinkel(ディンケル=スペルト小麦)を使ったパンです。
ディンケル=スペルト小麦とは・・・古代小麦の一種
普通小麦の原種にあたるスペルト古代小麦ですが、強健な植物で、普通小麦が育ちにい環境や、極端な天候異変及び土壌条件でも耐えてきました。9,000年以上前にヨーロッパで栽培されてたと言われています。
その穀粒の例外的ともいえる厚い皮殻は、汚染物質や昆虫から内部の穀粒を守り、化学肥料、除草剤、殺虫剤や農薬を殆ど用いることなく栽培することができます。
小麦アレルギーを発症しにくい
普通小麦は、育ちやすくするために、粘着力が強く加工品が作りやすくなるように、味を良くするためにと、度重なる品種改良(遺伝子操作も含む)が行なわれてきました。その過程で、「グリアジン」というたんぱく質が増えましたが、このグリアジンは血糖値を急激に上げ、食欲を刺激したり、腸内の細胞を破壊したりと、小麦アレリギーの原因の一つであり、グルテンフリー食事療法を生むきっかけにもなった物質です。
対してスペルト小麦は人工的な品種改良がほとんど行われておらず、小麦アレルギーやグルテン不耐症、セリアック病の症状も出にくいと言われています。但し、グルテンフリーではありませんので、必ず食べる前に医師のアドバイスを受ける事が必要です。
普通小麦より栄養価が高い
普通小麦は、製粉工程中に除去される表皮と胚芽に、最も多く栄養素が含まれていますが、スペルト小麦は、穀物の内部にある胚乳に栄養素が多く含まれているため、効率的に栄養を摂取できます。
鉄やマグネシウムなどのミネラルに加え、亜鉛や銅などの微量元素、ビタミンについてはB1・B2・B3・B6・Eなど。たんぱく質に関してはリジン以外の必須アミノ酸全てにおいて普通小麦よりも高い数値を示します。
低GI炭水化物
スペルト小麦は食物繊維が豊富なため、他の小麦に比べてゆっくりと分解されるため、血糖値の急激な上昇を抑えることができます。糖尿病患者や高血糖値の方、低インシュリンダイエットをしている方にも優しい、低GIな小麦です。
風味が良い
普通小麦に比べて薫り高く、しっかりとした味わいがあります。その用途は普通小麦と同様で、パン以外にもパスタなど、様々な小麦製品に用いられています。また、ディンケルの未成熟な種子を熟成させた ”Grünkern” (=グリーンスペルト古代小麦)」も風味がさらに際立つことで人気です。
日本でディンケルのパンを見つけるのは難しいかもしれませんが、ドイツで見かけたときには是非お試しになってみてください。
Photo credit: multipel_bleiben on Visualhunt.com / CC BY-NC-ND
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