Nutrition

【連載】スポーツと栄養 ーPart5 運動前後の食事法ー


その昔は競技前に「カツ丼」を食べてゲンを担ぐ、力をつける、なんてアスリートもいたと思います。今日の優秀なスポーツ選手たちは、試合までに厳格な食事プランを立て、それにのっとった献立を食べています。食事の内容を変えたからといって突如成績が上がるわけではありませんが、自分の持ってる最大限の力、潜在力を発揮できるかどうかには大きく影響します。

GI(Glycemic Index グリセミック・インデックス)

すべての炭水化物(糖質)が同じように消化吸収されるわけではありません。GIは、食品に含まれる糖質の吸収度合いを示し、摂取2時間までの血液中の糖濃度を計ったものです。ブドウ糖を摂取した時の血糖値上昇率を100として、相対的に表されています。

例えばある食品のGI値が45というときは、その食品を食べた2時間後の血糖値の上昇具合がブドウ糖のそれと比べて45% だったということになります。

一般的に果糖などの単純炭水化物(糖分)は、複合炭水化物(多糖類)よりもGIが高いとされますが、必ずしもそうではありません。食パン、白米、ジャガイモなどは複合炭水化物ですがGI値は80以上と非常に高いものです。対して果糖(フルクトース)は、食物繊維を含んでいるため消化吸収が遅く、20程度です。

スポーツの後にGI値が高い食品を摂取することによって、枯渇した体内のエネルギー源(グルコース)を効果的に補填できます。スポーツをする前には、低GIと高GIを組み合わせることで、即効的かつ持続的なエネルギー源を担保することができます。


運動前の食事

運動前に目指すのは筋肉と肝臓内のグルコース貯蓄量を最大化し、血糖値を上げることです。しかし、研究によると運動前30-45分以内にGI値の高いものを食べると、期待に反して血糖値が低くなってしまうのです。場合によっては低血糖症に陥ってしまします。 理由はインスリン分泌が高まっている上に、運動によって骨格筋への糖の取り込みが増強されるからで、この現象を「インスリンショック」「運動誘発性低血糖」と呼びます。

これを予防するには、①運動の1時間から1時間半ほど前に糖質を摂取して血糖値やインスリン濃度が落ち着いてから運動を開始する、もしくは②運動の直前に糖質を摂取してインスリン濃度が高まる前に運動を開始する、③血糖値をある程度上げつつも激しく下降させないように、低GIと高GIを組み合わた食品や、GI値が中程度の食品を摂る、という対処法があります。

GI値が低い食品の代表としては、全粒粉の(精白されていない原材料で作った)パンやパスタ、玄米やオートミール、乳製品、バナナなど一部を除いたフルーツ(生でジュースになっていないもの)などがあります。

例えば、牛乳やヨーグルトをかけたオートミル、煮豆かスクランブルエッグをのせた全粒粉のトーストとリンゴや梨などのカットフルーツ、もしくは、焼き魚かグリルチキンと野菜と玄米のセットなどという、たんぱく質やビタミン・ミネラルも含んだバランスのいい献立が考えられます。

ただし、運動前は食べすぎないように注意しましょう。胃の中に食物がある場合は、消化機能が優先され、消化器官への血流が増えるます。運動するときには筋肉への血流を増やしてその力を最大限発揮したいので、消化中は運動するタイミングにはそぐいません。胃が満たされた状態で運動して吐き気した経験があるかもしれませんが、これは「消化のために胃の活動を優先させたいから、スポーツによる筋肉運動はやめて!」という身体のサインです。 また、試合当日などで緊張が高ぶっている場合は、消化に必要な血流が脳に集まってしまい、消化が遅くなる可能性もあります。


運動後の食事

例えばサッカー選手は、1 試合の総エネルギー消費量が約 1600 kcal、糖質400g相当です。試合後には筋グリコーゲンだけでなく、ビタミンやミネラルなどの栄養素も消費されて おり、速やかな回復をすることが望まれます。 アメリカスポーツ医学会では、毎時間体重1kgあたり1.0-1.2kg程度の糖質を摂取することを推奨しています。

ただし、これは体重60kgの人で毎時間60-72g、スティックシュガー20本分以上にあたり、なかなか大変。そこで、たんぱく質を組み合わせます。同時に摂取すれば糖質の摂取量を減らしてもグリコーゲンの回復が同程度またはより促進されるのです。骨格筋のたんぱく質合成を高める上でも好ましいです。

運動終了直後に糖質を摂取した方が筋グリコーゲン回復率が高いという報告がありますが、1日に試合やトレーニングを複数回行わない限り、つまりグリコーゲン回復に十分に時間がある場合にはそれほど急いで糖質を摂取する必要はないでしょう。運動直後は疲れて食欲が減退している可能性もあるので、まずはバナナやドライフルーツ、糖質・たんぱく質を多く含んだドリンクなどで補給します。その後の食事でパンやパスタ、ジャガイモや米、さらにはデザートのケーキ(単純炭水化物)で十分にグリコーゲンを補給しつつ、発汗によって失われたビタミンやミネラルもしっかりと摂取します。バランスよく様々な栄養素を摂り、その日の運動を文字通り「身」にしていきます。筋肉痛を防ぐ手立てにもなります。


Part 1
炭水化物(糖質)… 成果を発揮するための燃料

Part 2
脂質… なぜ必要なのか、その種類は

Part 3
たんぱく質… スポーツする際に必要な量は?

Part 4
ビタミンとミネラル… 運動量に伴い摂取量を増やすべきか?

Part 6(2018/3/12配信)
水分の摂取の仕方

出典:Sport Fitness Advisor

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